私たちは「痛みと不安がない粘膜ワクチンの創出」というミッションを掲げ、経口・経鼻ワクチンとも呼ばれる、飲んだり吸ったりする粘膜ワクチンを1日でも早く社会に届けるべく研究開発に取り組んでいます。cSIMVaでの粘膜ワクチン開発は、先導的研究を展開する大学と企業の研究者・技術者の知的好奇心・創造性・知力、そしてたゆまぬ努力によって推進しています。一方で粘膜ワクチンの社会実装には、優秀な研究者や技術者がOne Teamとなった研究開発が不可欠です。cSIMVaでは研究者だけでなく、日々実験台で研究をしている学生やポスドク・テクニシャン、拠点の運営を支える事務スタッフ、URAなど全てのメンバーが「One Team Chiba」の一員として重要な役割を担っています。私たちは、あらゆる職域の優秀な個からなるチーム全体の総合力で、粘膜ワクチンの社会実装を目指しています。
粘膜ワクチンの研究開発を進める上では、社会との繋がり・社会からの理解が重要と考えています。私たちは新型コロナウイルスパンデミックを経験して、ワクチンの恩恵を学び、再認識しました。一方で、ワクチンによる過剰な体の反応や有形無形な不安を抱いた方もいらっしゃることを真摯に受け止め、そのような方々の懸念を払拭できるようより安全で信頼性の高いワクチン開発・正確な情報発信に努めます。私たちcSIMVaは、そのミッションを共有しサポートしていただいている社会と共に歩み、未来型経口・経鼻ワクチン研究開発を進めていきます。それが、真に我が国に始まり、世界の公衆衛生に貢献する道だと信じています。千葉大学cSIMVaが誇る優秀な国内外研究者と技術者は、「One Team Chiba」としてミッション達成に向けて邁進しています。今後も社会とコミュニケーションを大切にし、未来型粘膜ワクチン研究開発の進捗を共有しながら、皆様と共に未来の予防医療を創造して参ります。
千葉大学未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点 拠点長
清野 宏
従来の注射型ワクチンは、冷凍・冷蔵での輸送や注射針などの医療リソースが必要であり、大きなハードルとなっています。これを解決するのが、粘膜から接種する新しいワクチンです。
粘膜ワクチンは、粘膜にある免疫システムを利用して、病原体の侵入を防ぎます。実用化されれば、鼻に噴射したり錠剤を飲んだりするだけの「セルフ予防接種」が実現するかもしれません。
令和3年6月に閣議決定された「ワクチン開発・生産体制強化戦略」 に基づき、日本医療研究開発機構 先進的研究開発戦略センター(AMED SCARDA)が主導する「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」のシナジー拠点(拠点長:清野宏)として、令和4年10月に設立されました。持続可能な粘膜ワクチン開発を推進するために、国内の研究機関だけでなく、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ラ・ホヤ免疫学研究所およびガーナ国立ワクチン研究所との国際的な開発体制を整え、13の企業と6つの研究機関とで包括的な連携協定を締結し、有効かつ安全・安心な粘膜ワクチンの実用化を目指しています。
cSIMVaでは、所属する研究者を「統合的循環型三層戦略的研究計画(iTSP)」に配置し、ボトムアップによるシーズ探索から実用化に向かうシームレスな出口戦略を推進しています(図2)。iTSPは三層で構成されていますが、各層が連携してその課題解決を行っています。
① 知識基盤:ヒト粘膜免疫の理解にむけたその誘導機序および免疫記憶維持メカニズムの解明
② 技術基盤:AI・データサイエンスなどを駆使したワクチン抗原やアジュバントの最適化による粘膜ワクチン候補の開発
③ 技術統合:開発された粘膜ワクチン・アジュバント候補のヒトPOC(有効性の確認)と治験の推進