明けましておめでとうございます。cSIMVa拠点長の清野宏です。皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
本年は、私たちのビジョン「安心で体に優しい粘膜ワクチンが命と生活を守る」の実現に向けて、これまで以上にcSIMVaの目標である未来型粘膜ワクチン研究開発と次世代を担う人材育成を推進し、その成果の社会還元に向けて尽力してまいります。
昨年は、cSIMVaでの粘膜免疫・粘膜ワクチン研究は大きく進展しました。具体的には、粘膜免疫の誘導・制御機構やアレルギー・自己免疫疾患・呼吸器疾患等の病態がワクチン効果・副反応に及ぼす影響について、多くの新規知見を学術論文として発表しました。その一部はWebサイトにて紹介しています。また、季節性インフルエンザ経鼻ワクチン、腸管下痢症経口ワクチン(MucoRice)については、治験実施に向けての準備を着実に進めることができました。さらに、粘膜ワクチン成功の鍵を握っている理想的な経鼻ワクチン接種デバイスの創製とその国際的な評価指標の策定を目指し、企業との連携に着手しました。これらの進展にはcSIMVaに所属する研究者・技術者・学生・研究補佐員・事務/サポート担当者などを含む"One Team Chiba"メンバーの日々の努力とともに、AMED SCARDAによるご支援・ご助言、他拠点・サポート機関との連携、そして企業の皆様によるご協力無くしては達成することができなかったものです。関係する皆様に改めて感謝申し上げるとともに、未来型粘膜ワクチンの創製にチーム全体で一丸となり全力で取り組んでいく所存です。
人材育成面では、大学院のワクチン学・感染症学コースへの協力や若手研究者・大学院生などを対象としたcSIMVaチャレンジグラントによる研究支援の継続に加え、体験実習生受け入れ、科学イベント・メディア出演などのアウトリーチ活動・啓発活動を通して、幅広い年齢層を対象とした活動を展開しました。
拠点事業では、フラッグシップ拠点である東京大学UTOPIA、他のシナジー拠点・サポート機関との合同シンポジウムやセミナーの開催が契機となり、世界最先端の知見を得る機会・人的なネットワーク構築の貴重な場を創出することができました。これにより新たな研究テーマの発想や、他拠点・サポート機関との共同研究の創出に繋がり、具体的な課題解決に向けた計画も軌道に乗せることができたものと考えております。加えて、企業との連携をさらに拡充することを目的に、フラッグシップ拠点・シナジー拠点合同でBioJapan2024に出展し、オールジャパンでワクチンの研究開発に取り組んでいる体制について情報発信するとともに、技術導入・ネットワーク構築にも取り組みました。
本年は、AMED SCARDA「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」も4年目を迎え、これまでの研究活動の"成果を刈り取る"年が始まると考えています。社会からの期待に応える成果がより一層求められる時期であると意識し、粘膜ワクチン候補の開発研究を加速させるとともに、粘膜免疫機構の解明に基づく新たなワクチン研究テーマの創出に取り組み、今後のワクチン新規モダリティ研究開発事業への提案に繋げます。また、カチオン化ナノゲル、MucoRiceに続く粘膜ワクチン送達研究(DDS研究)についても異分野融合による国内外の研究者との共同研究に取り組みます。さらに理想的な経鼻ワクチン接種デバイスについては出口を意識して、自己接種が可能で環境にも優しいという視点も盛り込み、連携企業の協力のもと研究開発を加速します。そして、4月に2名の分担研究者(専門分野:免疫学、感染病態学)を迎え入れ、有事の対応も含め基礎から臨床まで一貫したワクチン研究開発が可能な体制を構築いたします。
直近では、2月に世界的に著名な研究者を千葉大学にお招きして、cSIMVaの研究活動を紹介・議論しご助言をいただく国際アドバイザリー会議を開くとともに、千葉大学真菌医学研究センターと共催で感染症グローバルネットワークフォーラムを開催いたします。また、6月には米国サンディエゴにて、cSIMVa・京都大学免疫モニタリングセンター(KIC)・カリフォルニア大学サンディエゴ校・ラホヤ免疫研究所共催シンポジウムを開催いたします。これらのシンポジウムが新たな課題解決に繋がること、そしてヒト免疫学研究とワクチン創製のための真のグローバルな研究ネットワーク基盤の構築に貢献することを期待しています。
今後も、未来型粘膜ワクチンの社会実装に向けてcSIMVaの誇る総合力・創造力・総進力を発揮して、"One Team Chiba"で粘膜免疫学研究の深化と粘膜ワクチンの研究開発に邁進してまいります。引き続き、皆様からの温かいご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。
拠点長 清野 宏